第1章 洗脳ハートⅠ「気付いた事」
沖田は取り合えず自室に戻った。
部屋に入ると閉めた襖にもたれる様に座り込む。
背中と額にまだ真衣の感覚が残ってる。
顔まで熱くて、走った訳でもないのに息が苦しい...
「...心臓やべぇ...」
あんな風に逃げ出してバレてないかな...
まァでもあいつ天然だし馬鹿だから大丈夫か。
「って、ンな事どうだっていいだろィ!
何でさっきからそればっか気にしてんだよ!!」
誰もいない一人部屋の空間で大きな声を出す沖田。
端からみたら変な人に見えるだろうが
本人はそこまで気にも止めていない様子。
「........。」
今度はその場で黙り込む。
暫くして落ち着くと、ふぅっと溜息を吐き
同じ姿勢でいて体が硬くなったので背伸びをした。
「......ん?」
ふと机に目をやるとそこには朝
部屋を出る時には無かった筈の物が置いてあった。
綺麗に整頓されてはいるが、資料が山になってる。
「うわ...やる気ねぇのに。」
紙束の数に思わず声を出してしまう沖田
面倒臭そうに机に向かい移動すると山詰みの資料の上に
一枚の書置きがちょこん、と載せられてあるのを見つけた。
"サイン記入と提出お願いします。"
メモ用紙に小さくて角の無い文字。真衣だ。
その隣には名前以外、記入済みの始末書が置いてあった。
「ご苦労な事でィ」
独り事を悪態のように言ってみせるも
どこか嬉しそうな、申し訳なさそうな表情。
小さな書置きをポケットにしまうと
沖田は机に向かい筆を握った。