第4章 洗脳ハートⅣ「不器用な心」
言い方こそ荒いが、その口から出てくる言葉は
不思議と真衣の気持ちも緩和してくれた。
「な、なるほど...。」
「分かったらそんな身にもならねぇ事止めて
もっと有効に非番を活用しなせェ。」
「は、はい。」
はいと言っても鍛練も止められちゃったし
今からの時間とくに予定もないし
何かしたい事があるわけでもないけれど。
でも沖田さんの言ってる事は正しい。
ただ沢山鍛練して量をこなせばいい訳じゃない
向き不向きをもう一度よく考えて
自分に見合った鍛え方をしなくちゃ。
「ありがとうございます、沖田さん!
私もう一度よく考えて稽こ......」
「三分で用意しろィ。」
もう一度よく考えて稽古してみます。と
言葉を続けようとしたのだが
それは沖田の一言によって遮られた。
「はい?」
「どうせ暇なんだろィ、仕方ねェから
巡回ついでに美味い甘味屋連れてってやらァ。」
「甘味屋...ですか?」
「疲れた時には甘い物って言うだろィ。」
何を言い出すかと思えば甘味屋って。
これも沖田さんなりの気遣いなのだろうけど
この人のこういう話の切り替えとか
考えてる事とか、正直よく分からない。
「あの、私、稽古......」
「稽古だ鍛練だ。って根詰めても身体に毒でさァ。
人間ってのは一割の努力と九割の息抜きで出来てんでィ」
「あの、それ殆どサボってますね。」
「ごちゃごちゃ細けぇ事気にすんなィ。あと二分。」
「えぇっ!」
いきなり現れたかと思えば説教したり
そのくせどこか優しかったり
掴み処がよく分からない人だけれど
決して悪い人でない事は確かだ。
「あと一分でィ。遅れたらお前の奢りな。」
「ちょっ!カウント速過ぎっッ!!」
真衣は沖田に言われるまま
急いで道着や竹刀を片付けた。