第1章 洗脳ハートⅠ「気付いた事」
「何でィ、騒々しいなァ」
「何だじゃないですよ!またサボって!」
慌ただしい足音の主は一番隊服隊長、真衣だった。
背格好が小さく幼い為、一見町娘の様に見えるが
こう見えても真衣は真選組唯一、異例の女隊士で
隊士補佐役と共に沖田直属の部下でもある。
真衣は沖田を見つけるなり眉間に皺を寄せた。
「書類上がってないから急げって土方さんが探してましたよ?」
「あァ、そうかい、じゃァ俺は大事な用が入って
忙しいって伝えといてくんなせェ。」
不機嫌そうな真衣を横目に放って
懐から愛用のアイマスクを取り出すと
それを自分の頭に着けて縁側に寝転び直した。
「ちょっと隊長!私が怒られちゃいますよ!!」
「俺の為にすまねーなァ」
「絶対思ってないでしょ!心混もってないし、
つか薄ら笑ってるし!いいから起きて下さい!!」
そのまま寝返りをうって真衣に背中を向け
再度昼寝を再開しようとする沖田に対し
真衣は何とか起こそうと沖田の腕に手を回す。
そして寝転んでいる沖田を引っ張り起こすように力をいれた。
その時、沖田に柔らかい感触が訪れた
真衣の体温が背中を伝う。
瞬間、沖田はビクリと体を跳ね勢い良くアイマスクを外した。
その反応に真衣も驚いて目をぱっちりと大きくした。
「ぁ..痛かったですか?」
「...別に。」
「すいません、力入れ過ぎちゃいましたかね、私」
「何でもねぇって言ってんだろィ、この怪力女。」
「なっ..!折角心配したのにその言い方!」
咄嗟に取り繕ってはみたが、少々苦しいか。
だが真衣は気付いていないみたいだったので
なんとかその場はやり過ごせた。