第3章 洗脳ハートⅢ「俺が護るよ」
沖田に抱えられたまま外へ出ると辺りは昼を過ぎていて
夕暮れ時の風が少し肌寒く感じた。
車を停めておいた場所まで歩いて向かおうとすると
すぐ近くでクラクションが鳴る。
音のした方を見ると、土方が数メートル程離れた
路上の端に車を止めて待っていた。
「乗れ。」
土方に言われるまま、沖田は真衣を後部座席に下ろすと
反対側のドアに回り、車に乗った。
間もなく応援にかけ付けてくれた隊士達に
状況説明をして残してきた浪士とテロ集団の連行を任せると
そのまま車を走らせ屯所への帰路についた。
屯所へと戻る車の中、沈黙を破るように真衣が口を開いた。
「...すいません。お二方に、ご迷惑をお掛けして...」
自分の軽率な判断が招いた事態。
副長に任された仕事を何一つまともにこなしていないし、
沖田さんがいなかったら、今頃私は此処にいないんだ。
本当に迷惑をかけてしまった...
真衣はただ謝るしかなかった。
「気を付けろっつったの聞いてなかったのか?」
「いえ...私の勝手な判断です、すいません。」
「...チッ。まぁ、屯所に着くまで休んでろ。」
「はい...。」
つい先程の沈黙以上に重い気持ちになってしまい、
土方が自分を気遣ってくれる
その言葉すら真衣には痛みに感じた。
もやもやと思いを巡らせていると
突如、頭にふわり、と暖かい感覚が訪れる。
「沖田さん...?」
視線を上げると沖田の手が
自分の頭に置かれている様子が見えた。
「寝てなせェ。」
聞こえたそれは、怒っている訳でも
いつもみたいに悪態をついてる訳でもない
柔らかく落ち着いた声で、真衣は随分と安心した。
ぶっきら棒だけど、優しい声。
手の平から伝わる沖田の温もり。
真衣は言われるままそっと目を閉じた。