第3章 洗脳ハートⅢ「俺が護るよ」
あぁ、こんな事になるなら持ち場を離れる前に
沖田さんに一言でも連絡しておけば良かった。
今更、後悔したところで状況が変わる訳でもないが...
「脱がせ脱がせ!」
「啼かせろ!」
「全部剥いじまえ!!」
もう終わりだ...
耳障りな喚声の中ぎゅっと目を瞑った。
「ぐぎゃぁああっ!!」
と、同時に誰かの悲鳴。
驚いて目を開けると、野次を飛ばしていた連中が倒れている。
そしてもう一つ。
周りの連中とは別の声が耳に届く。
「はーい。そこの破廉恥女ァ、わいせつ罪で逮捕だぜィ。」
「なっ、テメェは・・・」
真衣は倒れたまま声の聞こえた方を向くと
そこには剥き出しの刀を握った沖田がいた。
「そいつに触れたのはどいつでィ?」
口調こそ変わらないものの、沖田は見るからに殺気立っていた。
「お、おい...コイツ、真選組の...」
「沖田、総悟...!」
真選組の沖田総悟と言えばそれは有名で
この浪士達も知っているようだ。
浪士達は先程までの調子とは打って変わって
真衣を解放すると顔面を蒼白させて後ずさるが
彼らが背にしているのはコンクリートの壁。
真衣は痛みに耐えながらゆっくりと体制を起こす。
すると沖田は着ていた自分の上着を脱ぎ真衣の肩に被せた。
そして、そのまま浪士達の方へ向かっていく。
「まァ、触れた奴も見てた奴も同じでィ。全員死ね。」
「う...うわぁぁあああ!!」
「ひぃっ、ぎゃああぁぁぁ!」
「や、やめてくッッ...」
沖田が刀を構えた瞬間、断末魔のような叫び声が響き
そして、すぐに何も音がしなくなった。
沖田は刀を鞘に戻すと此方へ歩み寄ってきた。
「真衣、何してんでィ。」
「...沖田さん。あの...」
「まァ話は後で。戻るぜィ。」
「...はい。あの、副長は?」
「向こうとっくに片付けて車で待ってらァ。」
それだけ言うと、沖田は真衣を抱き上げた。
そして、倒れてる浪士達の間を抜け出口へと向かう。
「沖田さん...ありがとう、ございます。」
呟くようにお礼を言えば、返ってくる言葉はなかったが
真衣を抱える腕に微かに力が篭ったのが伝わった。