第3章 洗脳ハートⅢ「俺が護るよ」
「ひゃはははっ、女一人で何が出来る!?」
天人は厭らしい笑みを浮かべながら真衣を見下ろしている。
その姿はどこからどう見ても隙だらけだった。
次の瞬間、真衣は目前に突っ込んだ。
一気に距離を詰め、敵の懐に難なく入り込むと
スピードを落とすことなく刀を切り上げた
そして、腹部から肩にかけて一太刀入れる。
大量の血が飛び散り、天人はゆっくりと倒れていく。
息はあるにしろ、その場で動かない天人に向かい
真衣は刀を握ったまま一歩手前まで近付いた。
「命惜しくば大人しく同行願えますか。」
「ふ....愚か...め...」
真衣の問いに応える事はなく、天人は薄ら笑う。
まだ自分の措かれてる状況が理解出来ていないのか、
と思い真衣は少し呆れるが
取り敢えず連行しようと、持っていた刀を納め
天人に手錠を掛けようとした
その時、鈍い衝撃と共に、体が飛ばされる。
背後から何者かに重い鈍器の様な物で殴られたようだ
「っ...ぅあッッ!!?」
飛ばされた真衣は受身を取ることが出来ず
コンクリートの壁に体を打ち付け、その場に崩れ落ちた。
「――――ッッ...げほっ、げほっっ...」
重度に負担がかかったらしく
神経に激痛が走り、起き上がる事が出来ない。
それでも、痛みに顔を歪ませながらも前を見る。
そこには大勢の浪士が武器を構えて立っていた。
中には先程倒したものと同種らしき天人の姿もある。
あまりの数の多さに真衣は額に汗を滲ませる。
しかも、今の衝撃で刀は廊下の端まで飛ばされてしまった。
丸腰でどうにかなる人数ではないが、仮に刀があったとしても
自力で立つ事も出来ない今、戦えるわけではないのだが。
せめて何とか沖田達に知らせる事が出来ればと
真衣は相手の様子を伺う。
「おい、コイツ真選組だぜ。」
「そういや、このナリ見覚えあるな。」
「八ッ、こんな女が幕府の犬かよ。笑わせるぜ」
次々と馬鹿にした様な野次が飛び交う中で
真衣は隙を見て伏せたままの状態で
隊服の内ポケットから沖田がくれた携帯を取り出し、
ばれないようにコールを鳴らした。