第3章 洗脳ハートⅢ「俺が護るよ」
中に入ると、そこは随分と殺風景な場所だった
まぁ廃墟なのだからこれが普通なのだが
天井も床も壁も柱も全てコンクリートで造られている。
ここからは其々、別行動を取り進んでいく。
真衣は物陰に隠れて一人で待機する。
一人と言っても、目の届く位置に沖田と土方が見えるので少し安心した。
でも何が起こるかわからないから気を抜いてはいけない。
真衣は心中で呟いた。
その時、不意に視界を横切る不振な影。
咄嗟に真衣は土方と沖田に知らせようとするが
二人の処からは死角になっているらしく気付いていない様子
しかも、今は待機中の為、声を出して呼ぶ事も出来ない。
けれどほかっておく事も出来ないし、
もしそれが今回取締る攘夷浪士の一味だったら尚更だ。
そう判断した真衣は一旦持ち場を離れ
その影の行った方向を追いかけた。
まだ昼間だというのに建物の構造のせいか
光が遮られていて廊下は随分と薄暗かった。
「あれ....?」
確かに見た筈なのだが人影は一向に見つからず
真衣はついに廊下の突き当りまで来てしまった。
ここまで来る途中、扉もない一本道だったから
道を間違える筈もない。
見間違えたのかなぁ.....。
疑問に感じたが、そう思って引き返そうとした時。
頭上から風が抜けていくのを感じた。
真衣は反射的に後ろに避ける。
次の瞬間、大きな衝撃と共に天井から重い影が降ってきた。
そしてそれは先程真衣が立ち止まっていた床を破壊した。
「ッ......!!」
あと少しでも気付くのが遅かったら危なかった。
そこから数歩距離を取り真衣は身構える。
もくもくと埃煙が立ち込める中
少しずつその影の正体が露わになってきた。
「なんだァ!?どんな強者が来たかと思えばただの女かよ。」
血色の悪い肌に、尖った耳、おまけに鰓まで付いている。
それは二メートル程ある大型の天人だった。
その天人は体格差から真衣をなめている様子。
攘夷浪士達の取引相手はこの天人の可能性がある
この事を土方と沖田にも報告しなければいけない。
相手が油断してる今の内に早く片を付けた方がいい。
真衣は腰に差した刀に手をかけた。