第3章 洗脳ハートⅢ「俺が護るよ」
「...敵の内情が予測出来ねぇ今、油断はするな。」
「...はい。」
「まァ大丈夫だ、いざとなったら俺も総悟もいる。」
土方の運転で屯所から目的地へ向かう道中。
土方が後部座席にいる真衣に声をかける
気遣ってくれたのかは分からないが
そのおかげで少しだけ重い気持ちが解けた。
真衣は剣術は並以上に心得ているし、自身もあった。
ただ例え敵であっても命あるものを切らなければならない。
それに真衣は辛く、痛心を感じていた。
でもそれでは何も護れないし足手纏いにはなりたくない。
だから隊士が足りていない今
自分に与えられた仕事をやり遂げるよう集中しよう。
真衣は胸の中で考えを纏めた。
すると隣にいる沖田が声をかける。
「なに思い悩んでんでさァ、ンな調子だと怪我するぜィ。」
「沖田さん...心配しなくても大丈夫です。」
「心配なんざしてねェや。真衣は後から出てきて
浪士達に手錠掛けてりゃいいんでィ。」
真衣の気持ちを察してか、沖田は配役を言い渡すが
それでは不満だと、真衣は反論した。
「そ、そんな、私だって戦えます!」
「そいじゃ、一人で突っ込んで組織壊滅させてこいや。
華麗な剣術が見れるんだろィ、楽しみでさァ。」
「私、自爆特攻隊ィィィィィ!!?」
「大丈夫でィ、ヤバくなったら俺が
敵丸ごとバズーカーで沈めてやらァ。」
「ちょ、私も沈められるんですけどォォォォ!!!」
「うるせェ!少しは緊張感持て!!」
「......す、すみません。」
後部座席で騒いでいると土方に怒りの渇を入れられる。
暫く車を走らせると、小さく目的地が見えてきた。
密会が行われる予定の廃墟の工場らしき建物だ。
そこから数十メートル手前で車を停める。
ここからは目立たないよう歩いていくらしい。
人気の無い路地を選びながら、少しずつ近付いていくと
目的の建物が段々、近くに見えてきた。
先程、車を停めた位置から見るよりも随分大きい。
よく見るとコンクリートが剥き出しになっていて
あちこち錆びがついている。
ようやく目の前まで辿り着くと、土方が小声で喋る
「行くぞ。」
そして土方の合図と共に中に入っていった。