第1章 虹村家の娘 1
それから数週間たち、学校にも慣れてきた。
今のところ教師からはそれなりに認められ、不良どもとの喧嘩も全勝である。
先生達としても私を敵に回したくないのか、授業をサボっても一応出席扱い。
それなりに充実した学校生活が送れている。
形兆は授業にはちゃんと出ているけど、寝ているところしか見たことが無い。
わたしいつもサボりの時や昼休みには屋上で億泰と駄弁ったり、購買のパンなんかをかじっている。
その日もパンを完食したあと、億泰とだらだらとしていた。
「なぁ、俺達ってよォ」
「ん?」
「血ィ繋がってねぇんだよな…?」
「あー…ほとんどね」
「ふぅん…」
何でそんなことを聞くのか、と訊ねる前に、私の口はふさがれていた。
億泰の唇によって。
「っ…!?」
唇を重ね合わせるだけの軽いキス。
「っな、なにしてんの…!?」
「だっ…だってよ、血ィ繋がってねぇんだろ?」
ならいいかなァッて思ってよ、と笑って続ける億泰。
「そういう問題じゃないっての…もうすんなよなぁ…」
半ば呆れながらそう返すと、えぇー、と抗議の声を上げた。
別に初めてでは無いし、億泰も初めてではないんだろう。
そして何事も無かったかのように、またくだらない話をし出す。
その日の帰り道。
億泰はクラスのダチの家に泊まりに行くようで、私は一人で下校していた。
すっかり慣れた家に帰り着くと、まっすぐ自室へ向かう。形兆はまだ帰ってないようだ。
荷物を置き、上着を脱いで今度はリビングへ。
今日の飯は形兆が作る番だったから、帰りがけに必要な物を買って来るだろう。
冷蔵庫を開け、残り物の確認をしていると、ふと見慣れない物が目にとまった。
小さめの箱のような物。億泰のお菓子か何かだろうか。
なんとなく手に取ってみると、ひんやりとした厚紙の感触が手に伝わってきた。
そして、それが何かを理解して、思わず息を止めてしまった。
コンドーム。
なんで冷蔵庫に入ってたのかとか、誰の物かとかはこの際どうでもいい。
あの二人の物だろうなってことは分かるし。
問題なのはこんな物がなぜあるのかということだ。
まだ箱は未開封のまま。最近買われたんだろう。
…誰に使うんだ…?
2人とも確かに年頃だし(まぁ私もそうだけど)、持っていてもおかしくないってのは分かる。
でも何で家に?