第6章 虹村家の娘 6
目が覚めると、見覚えのない部屋にいた。
それも、ベッドの上に。
まず目に飛び込んできたのはギター、次に机の上の札束。
…どういう人間が住んでいるんだ…?
金持ちのギタリストだろうか。
窓の外は暗く、時計を見るに気を失ってから数時間ほど経っているようだ。
とりあえずベッドを降りようとしたその時だった。
「そこから動くんじゃあね〜ぜ!」
突然声をかけられ、動きを止める。
男の声だ。
ゆっくりと顔を上げると、向かいの壁にもたれ掛かる紫の長い髪をした男が私を見ていた。
気を失ってこいつに連れ去られたのか…!?
「お前、何のつもりだ…」
様子を伺いながら問う。
と、男が私を鼻で笑った。
「何のつもりって…ずいぶん強気だなぁ〜?」
こいつのこのふざけた態度、頭に来る。
「お前よォ〜…形兆の妹なんだろ?」
妹、という言葉につい反応しまった。
あまり言われなれていないというのもあるが、一番の理由は違う。
「俺はお前のことも形兆のことも、仗助のこともほかの奴らのこともよ〜く知ってんだよォ」
得意げな、しかし悪意を持った笑顔でそう言った。
「…お前、スタンド使いか…?」
「おっ!ご名答〜!その通り、俺はスタンド使いさ。名前は音石明…将来の夢はスーパーギタリストってね」
バチバチ、という火花とともに音石明と名乗ったそいつの背後から、黄色い鳥のような小柄のスタンドが姿を現した。
電気を纏っているかのようにひかり輝いているのに、凶悪そうな顔つきのせいで神々しさを感じない。
すかさず私も自分のスタンドを出し、警戒態勢に入る。
「おうおうお前のスタンドのことも知ってるぜぇ?能力はコピー…今の所、形兆と億泰のスタンドしかコピーしてねぇよな?」
音石の発言に驚くと同時に、私は軽く恐怖すら感じた。
合っているのだ。私はまだ、2人のスタンドしかコピーしていない。
というより、出来ない。
コピー出来るスタンドの限界が、私の今の精神力では2つが限界だったのだ。
それを知っているのか…!?この男は…!
危険だ。私の手の内は読まれている。
「まぁ、もしお前が俺に攻撃でもしたらよォ、…お前の大事な大事な兄貴、殺しちまうぜ?」
にたり、と嫌らしい笑みを私に向ける。
どこまで知っているんだ…!
あのスタンドの能力はそういう力なのか…?