第5章 虹村家の娘 5
朝。
いつも通り同じベッドで目覚め、私たちは朝の支度を始めた。
「…億泰のやつは…?まだ寝てんのか?」
「昨日から仗助のとこに泊まってるよ…昨日言ったよね?」
洗面台で、タオルで顔を拭きながら答えた。
「あぁ…電話があったんだったな…」
よかった、酒のせいで昨日のことを忘れている訳では無いようだ。
朝食を済ませ、各々の着替えをしている時、私はあることに気づいた。
昨日玄関での行為のせいで制服を汚してしまったままだということに。
「形兆、今日は学校行かない…っていうか行けない」
「はあ?なんでだよ」
「制服…昨日の、その…汚したままで」
「…それは今日洗濯すれば明日は着れるだろ?今日1日、指定の女物で我慢すりゃあいいじゃねぇか」
「えぇ〜!?着るの!?アレを!?」
スカート、嫌いなんだけど…!?
「学校で買わされちまったんだし1回くらい着とけ」
そう言って私の制服を手早く洗濯機に突っ込み、指定の制服を押し付けてさっさと家を出ていってしまった。
…仕方ない、我慢するか…。
「おは…よう…!?お前なんでいつもの長ランじゃあねぇんだ!?」
早速、通学路で億泰に驚かれた。もちろん、仗助もいる。
「あー…昨日色々あって、今洗濯中なんだよ」
「みっ…見慣れねぇ〜…!!」
「今日だけだから気にすんなよな」
私達は適当な会話をしながら、学校へと向かう。
この姿を人前に晒すのが嫌で、一時限目から私は屋上にいた。
特にすることもなく、ぼうっとして時間が過ぎていくのを待っていると、見覚えのある後ろ姿が空き教室にいるのが見えた。
形兆だった。
1人なのか誰かといるのか、ここからはよく見えない。
すこしすると形兆の姿も見えなくなった。
さらにしばらく空き教室に目を凝らしていると、不意に屋上の扉が開く音が耳に入ってきた。
振り向くと、形兆がこちらへ歩みよってくるところだった。
「来い」
腕を強く捕まれ、ずかずかと歩いて行く形兆に付いていくことを余儀なく強いられる。
ついた先は、先程の空き教室だった。
物置や資料室ばかりの階にひっそりとある空き教室。
普通の教室より机やロッカーの数が多い。
気付くと、形兆が教室のドアに鍵をかけている。
そしてこちらに向き直ると間髪入れずに机の上へ私を押し倒した。