第3章 虹村家の娘 3
「俺はお前が他の奴と2人でいるのがすげぇ嫌なんだよ」
シャワーを浴びてリビングでくつろいでいると、なんの脈絡もなく形兆が呟いた。
「お前は俺のもんだろう」
男らしいくせに、捨てられた犬のような、迷子になった幼子のような瞳でじっと私を見据える。
…あぁ、そうか。形兆は不安なのか。
「…そうだよ、形兆の、だよ」
私たちを結ぶものは普通のそれに比べてとても細く薄い。
実のものではないが兄弟で、そして2人の関係は誰も知らない。
いつ途切れようともおかしくないのだ。
体中につけられた痕も、独占欲のあらわれなのか。
そんなことが頭をよぎる。
いきなり強く腕を引かれて、力強く抱きしめられた。
予想していなかった展開に驚きつつも、身をゆだねて目を閉じる。
あぁ、温かい。
億泰はまだ帰ってこない。
時計は六時半をさしている。