第13章 魔王様と寂しさ
寮の前に着くと突然隼くんに抱きしめられる。
ビックリして買った荷物を落としてしまった。
外にいたのか隼くんはうっすらと汗をかいていた。
「隼くん?」
ギュッと力がこもるが、いつもより強い力だった。
「どうしたの?」
「小春が居なかったから」
「ちょっと買い物に行ってたから」
「電話しても出なかったし…」
「スマホ…エプロンのポケットに入れたままだった」
キッチンに置いたエプロンのポケットにスマホを入れたまま出掛けてしまい、隼くんの電話に出ることが出来なかった。
「ごめんなさい」
「でも、良かった。小春が帰ってきてくれた」
「え?」
「小春がもう帰ってこない……そんな気がしたんだ」
「私ね、今日初めてキラキラの衣装を着てる隼くんを近くで見たの。テレビと違って輝いてる隼くんがいて少し寂しいって思って…やっぱり住んでる世界が違うのかなって…毎日会っていても、同じ場所に住んでいても…隼くんが遠くに感じて…」
「僕はここにいる。分かる?」
私の手を取り、隼くんの胸に置かれると
ドクン、ドクン…と、胸の音を感じる事が出来る。
「僕はいつでも小春の近くに居るよ。どんなに離れてしまっても心はいつもキミの側に…住む世界が違う事も無いんだよ…僕たちは同じ空の下…ここに、こうして一緒に居る。小春が居なくなったら僕はいないのも当然なんだ。寂しいと思ったら僕に甘えて?泣きたいと思ったら僕の元で泣いて良いんだよ?」