第13章 魔王様と寂しさ
【隼】
僕の知らない所で泣いていたのか小春の目元は少し紅くなっていた。
愛しい人を泣かせてしまったのは僕の罪だ。
いつの間にかお互いを遠くに感じてしまっていた。
何度触れていても心までは読み取れない。
「帰ろうか…」
「うん…」
荷物を持ち空いた手を繋ぎ、寮の中へと帰る。
初めてだったのかもしれない。
小春が本音を言ったのは。
幼い頃から僕のワガママにも仕事に対しても何一つ文句すら言ったことが無かったから…
今の出来事で僕たちの距離がまた一歩近づけたのかもしれない。
「ただいま、皆」
「ただいま帰りました」
ここに帰れば皆が居る。
賑やかで温かい場所。
「今、作りますから」
「俺、手伝います」
「俺も…」
「葵くん、夜くん…ありがとうございます」
「僕は紅茶が飲みたいな…」
「さっき、新しい茶葉買ったから淹れてあげるね」