第13章 魔王様と寂しさ
【隼】
小春を捜そうと寮を出てきたのはいいけれど
「どこを捜そうか…」
上京してから大分時は経つけれど、小春が普段どこに行くのか知らないままだった。
普段どこに買い物に行くのか
どの道を歩いていくのか
僕は何一つ知らなかった。
知っているのは全部過去の事ばかり。
このまま本当に帰ってこない…
「まさか…ね」
それは無いと信じてる。
小春は帰ってきてくれる。
外は暗くなり街灯が付き始める。
辺りは夜と言う時間になっても明るかった。
外を歩く人も疎らになり、寮の周辺も人通りが少なくなった頃。
此方に向かってやってくる人影。
「あれは……小春っ!」
シックなワンピースに身を包み沢山の荷物を抱えながら来るのは間違えなく、小春だった。
「小春」
「え?隼くん!?」
寮の前で小春を抱きしめた。
バサリと、地面に荷物が落ちる音。
「隼くん?ど、どうして…」
「小春…小春…」
帰ってきてくれた。
小春…