第13章 魔王様と寂しさ
【黒月】
用事を済ませ、スタジオに向かうと既に収録が始まっていた。
「悪い、遅れた」
「お疲れ様、黒月」
月城の隣でジッと彼等を見つめる小春。
その表情はどこか悲しく、さみしげだった。
俺と月城は目を合わせると小春の方を向いた。
俺たちは裏方。
光の当たらない場所にいる。
それは小春も同じ。
霜月隼と言う男を一番見てきた人物なのだから。
俺たちよりも彼を理解し、支えてきた。
そして愛していた。
「あの、私……帰りますね。黒月さんも来し、私は自分の仕事に戻らないと…」
そう言い残し前を歩く小春。
ふと、見えた顔は今にも崩れてしまいそうだった。
「黒月…良いんですか?」
「分からない…」
俺たちが割り込んでも良いのか悪いのか…
「難しいな」
俺はスタジオで輝くアイツを見ていた。