第10章 魔王様と花嫁
女性のスタッフさんとスタジオに入ると直ぐに撮影が始まった。
ブーケを手に持ち、カメラマンさんの指示通りにポーズをとる。
「ん~…小春ちゃん、もっとリラックスしていいんだよ」
カメラになれない私は緊張が解れない。
ファッション誌など読まない私は普段のモデルさんたちの姿が分からない。
大体見るのはグラビやプロセラの載っている雑誌くらい。
やっぱり断っておけば良かった…
隼くんや社長が大丈夫でも。
私には出来ない。
「あのっ…!」
「お待たせしました。花嫁さん…」
断ろうとすると、スタジオのどこからか聞こえた隼くんの声。
「あ……」
スタジオからいつの間にか居なくなっていた隼くん。
戻ってきてくれたと思えば、そこには白いタキシードに身を包んだ隼くんがいた。
「隼くんっ…」
隼くんが居なくて不安だった。
だけど、目の前に現れた途端に目の奥が熱くなる。
「言ったでしょ?僕が付いてるよ……って」
隼くんは、膝を付き私の手を取ると軽く口付けをした。
カシャ!
同時に押されるシャッター音。
「いいね~!霜月くん!」
「ありがとうございます」
それからは、隼くんのリードもあり次々とシャッターが押されていく。
次第に私も緊張が解れていき、気付けば最後のショットになっていた。
「最後は好きなポーズしていいよ!」
「はーい…どうする?小春」
「隼くんにおまかせします」
私じゃ分からないし…
「小春、次は僕のために着てくれるかい?」
「……うん」
「約束…いや、予約だよ。未来の花嫁さん」
「っ…」
隼くんはカメラに写らない角度で唇を重ねた。
時が止まったようで
私たちだけの世界のようで
幸せだった。