第10章 魔王様と花嫁
「わあ……」
鏡に映るのは、いつもとは違う私の姿。
白いドレス。
白いベール。
まさか、着ることになるとは…
『身長!体型!うんうん!ピッタリだ!キミ、モデルやらない?事務所は?』
プロデューサーさんに押されながらも断ったにも関わらず…
『花嫁か…いいね。社長には僕が伝えるよ』
撮影の企画書を読んだ隼くんがプロデューサーと話をつけ、社長にも連絡して突然決まった。
『私、写真は…』
『大丈夫!顔は写さないから』
『でも…』
昔から写真…カメラに写ることが苦手だった。
でも、あんなにお願いされてしまったら段々断れなくなってしまった。
本当に私で良いのかな?
心の中は不安でしかない。
この世界なら私じゃなくても綺麗な人、可愛い人なんていくらでもいる。
どうして私なの?
「悲しい顔をしないで…花嫁さん」
「隼くん」
アイドルの衣装から普段着に着替えた隼くんが立っていた。
「綺麗だ…とっても」
肩に手を置き近づく顔にドキッとしてしまう。
「私…」
「大丈夫…僕が付いてるよ。安心して、小春」
手が重ねられ額にコツンと隼くんの額が当たる。
「目を閉じて…僕がとっておきの魔力を小春にあげる」
魔力なんて隼くんらしい。
どうしてこんなに落ち着くんだろ…