第9章 魔王様と夏の海
【始】
グラビの撮影は終わり、プロセラの撮影が始まっていた。
「暑い~!」
「でも、楽し~!!」
駆と恋が先にパラソルの中に入る。
「水~葵~」
「待って、新」
新、葵、春に続き俺も日陰の中に移動する。
「お疲れ様です。お水どうぞ」
「小春さん!?」
駆が驚いた声で小春の名前を叫んだ。
パラソルの下にいたらしい、小春。
白い水着に身を包んだ彼女。
「それは…」
その水着には見覚えがあった。
前日の夜の事。
グラビのリーダーである俺と、プロセラのリーダーである隼で話し合いをしていた。
『始、見てくれるかい?小春に似合うと思って買ってきたんだ』
『この水着のポイントは…』
『白は僕のイメージカラーだから…』
店員にオススメされた事や自分色に染めたいとか…結局その夜は隼の話で終わってしまった。
「パーカー濡れちゃったから…」
「でも、今も可愛いですよ!ね、恋!」
「もう、一番ですよ!」
駆と恋は普段通りに小春と話しているが、小春は少しもぞもぞとしていた。
「なあ、葵…あれって絶対そうだよな?」
「あ、あ、新!」
新が気になっていたあれとは…
小春の首筋、鎖骨、胸元にある赤い痕。
キスマークと言うものだった。
付けたのは誰でもない隼だ。
隼は分かっていて着せたのか…
気まぐれの魔王様の行動は俺には分からない。