第9章 魔王様と夏の海
「お待たせ、始」
「いや…」
ビーチには先にグラビメンバーが待っていた。
「陽、何かあったのか?」
「新…何も聞くな」
私は隼くんたちから離れ様子を伺っていた。
撮影始まーす!
監督の合図と共に彼らにカメラが向く。
自然体の皆が次々とカメラの中に写り込んでいく。
海で泳いだり、ビーチバレーをしたり…
キラキラしている皆がいた。
「小春」
「隼くん」
「小春もおいで」
「でも、撮影…」
私の話も聞かずに隼くんは私の手を引いた。
「少しだけ抜け出すだけだよ」
皆から少し離れた場所に移動し、足元だけ海に入る。
「気持ちいね…」
「うん…」
暑い日差しに足元の冷たい海水が気持ちがいい。
「やっぱり似合ってるね…その水着」
「でも、恥ずかしい…水着とか着ないから」
「可愛い…」
顔が熱くなる。
日差しのせい?
隼くんのせい…
「隼!」
「隼さん~!」
プロセラの撮影が始まると、海さんたちが呼んでいた。
「はーい…さ、戻ろうか」
「うん……あっ!」
歩き出そうと足を踏み出そうとすると、海水で緩くなっていた砂に足がもつれ、私はバランスを崩してしまった。
「小春!」
「きゃあっ!」
バシャーン!