第18章 彼の為なら。・:+°家康。・:+°
「家康の顔見たい。」
「駄目。」
赤くなった顔なんて見せたくない。家康はすこし力を入れて抱きしめ直す。
「家康の顔を見ておかえりなさいが言いた・・・」
言い終わる前に家康が夕霧の体を離し、夕霧の前に腰を下ろす。
「もう、何なのあんた。」
夕霧の目に映った家康の顔は赤く染まっていて。その顔に胸がときめく。
「家康・・・おかえり」
満面の笑みで一番言いたかった言葉を愛する人に告げる。
「ただいま」
家康は思わず夕霧を抱きしめた。
「ずるい」
耳元で囁く家康は何だか余裕が感じられなかった。
驚かせたくて自室で待つようにさせたのに。
戻れば襖は既に開いていて、そこを覗けば夕霧が立ったり座ったり。
それが俺を出迎えようか言う事を聞いて待ってようかソワソワしてたなんて可愛過ぎるにも程があるでしょ。
しかもあの笑顔。
反則だ。
「ねぇ家康・・・」
「何?」
夕霧の顔が突然近づいたかと思ったら・・・
「っ・・・」
唇に触れた柔らかい感触。
いつもは恥ずかしがって自分からなんてしないのに。
唇が離れたかと思うと、夕霧は膝を立て家康の頭に触れた。
「・・・夕霧?」
家康の声が聞こえたのか聞こえていないのか、返事もせず柔らかい毛に手を滑り込ませ優しく撫でる。
その優しい動きが心地よくて目を閉じる・・・
長旅の疲れからか心地良さにずっと溺れていたくなる。
でも・・・
いつもの夕霧じゃない。
「夕霧・・・?」
家康は自分の目の前にある夕霧の腰に優しく手を回し抱きしめる。
「家康っ・・・」
そのまま上を向くとそっぽを向き頬を染める夕霧の顔。
恥ずかしがってんの?
「何かいつもと違うけど・・・」
「こんな事されるの嫌・・・?」
「別に・・・」
家康はこちらを向き直し潤んだ目で見つめる夕霧にドキッとしてつい目を逸らした。
「ただ、いつもと違うから驚いただけ。」
その言葉を聞いて腰を下ろし、夕霧が口を開く。