第18章 彼の為なら。・:+°家康。・:+°
家康の部屋に向かう途中で女中から、外での出迎えは止めるように言われた。
「何かあるのですか?」
「いえ、そうではなくて・・・最近暗くなるのも早いので家康様が夕霧様に部屋で待って頂くようにと。」
なるほど・・・家康も色々考えてくれてるんだな。
「安土城には明日足を運ぶそうなので、本日はすぐに夕霧様の元へ参られると思います。」
「ありがとうございます。」
話が終わる頃には部屋に着き、そのまま家康の部屋で待つ事となった。
久しぶりだな。この部屋・・・
家主不在の間もきちんと手入れされた部屋はいつもと違い閉め切っているせいか薬草の入り混じった匂いががする。
いつもなら全然感じないんだけど・・・
それだけの間家主が不在になる事が今まで無かったということだろう。
襖を開け放つと共に新しい風が部屋に入り込んだ。
それを胸いっぱい吸い込んで吐き出した。
もうすぐ帰ってくる・・・どうしようドキドキする。
ソワソワする気持ちを抑え込むように襖を背にして座布団に腰を下ろした。
やっぱり門の前で出迎えしたいんだけどな。
誰よりも早く会いたいから。
でも、女中さんに言われたからなぁ。
家康の気持ちを汲むのも大事だよね。
大人しく待ってた方が・・・
でもっ・・・
「何やってんの?」
後ろから抱きすくめられ、立膝を立てていた足の力が抜けぺたんと座り込む。
「いっ・・・家康!?」
「何で立ったり座ったりしてんの・・・?」
「えっ・・・」
門まで行こうか行かないか迷っているうちに体も動いてしまっていたようだ。
腰を上げかけては座り、上げかけては座りを繰り返していたのだ。その状況を見られていた事を知り顔が熱くなる。
「門に出迎えに行こうか、家康に言われた通り待ってるか悩んでたの・・・恥ずかしい・・・」
「何それ・・・」
夕霧の肩に顎を乗せる家康の頬が夕霧の頬と触れ合った時、体温以上の熱を感じる。