第18章 彼の為なら。・:+°家康。・:+°
「えっ!?からかうつもりだったの?」
「そう怒るな。酒の席だ、楽しくいくぞ。」
上手い事政宗に誤魔化され酒を注がれた。
それにちびちびと口をつけながら思うのは光秀のあの言葉・・・
自分のして欲しい事をそっくりそのまま返せ・・・か。
でも、そのままって嬉しいんだろうか・・・
でも政宗や秀吉さんも珍しくまともな事を言ってるって言ってたし、的は得ているんだろうけど・・・
「ねぇ秀吉さん、政宗?」
「ん、どうした?」
「さっき光秀さんが言ってた自分のして欲しいことをしてあげるっていい案だと思う?」
「いいと思うぞ。俺は自分のしたい事を相手にさせちまうけどな。それでお互い楽しければ良し。」
「そうだな。要は相手を思いやるって事だろ?良案だと思うぞ。相手が喜んでくれればそんないい事は無い。」
二人にお墨付きをもらい、何となくホッとした。
別に光秀さんを信用していないわけじゃないんだけど・・・
いつも意地悪されているせいかまたからかっているのではないかとつい疑う所から始めてしまう。
帰ったら家康が喜ぶ事をしてあげよう。
そう思いながらまた杯に口を付けた。
「失礼いたします。」
「どうぞ。」
襖が開いたその向こうには家康の家臣の顔があった。
「本日の夕刻頃、家康様が安土に到着予定です。夕霧様に御殿でお待ち頂く様にと家康様から言付かっております。」
「分かりました。夕刻前に御殿へ伺います。」
襖が閉まったのを確認してから顔を綻ばせる。
やっと帰ってくる!
たかが数週間離れていただけなのに何ヶ月と離れていた様に感じる。
長かった・・・
色々喜ぶ事をしてあげたいけど、まずは笑顔で出迎えよう。
心踊らせながら夕霧は御殿へ向かう支度を整え始めた。
御殿へ着くと女中に出迎えられる。
「お待ちしておりましたどうぞお部屋へ。」