第17章 三成の秘密。・:+°三成。・:+°
「三献の茶は石田三成の有名な逸話で、鷹狩りに来ていた豊臣秀吉に一杯目は大ぶりの器にぬるめのお茶、二杯目はやや小さめの器にやや熱いお茶、三杯目は小ぶりの器に熱々のお茶を出して、それで豊臣秀吉に気に入られてそのまま城に連れ帰って家来にされたって言われてる。」
「え?三成くんがお茶なんてとても入れられるとは・・・」
「だから不思議だったんだ。まぁ、後から造られた逸話なんて山ほどある訳だから史実と違ってもおかしくはないんだけど。」
「そうなんだ・・・」
「・・・夕霧さん、時間切れみたいだ・・・じゃあまた。」
「うん、またね佐助くん。」
何かを感じ取ったようで佐助は天井裏へと消えてく。
そこからしばらくして襖の向こうで声がした。
「夕霧。入るぞ」
開いた襖の方を見ると陽の光を受けて美しく光る銀髪が風でさらりと靡いた。
「光秀さん。どうかされたんですか?」
「いや、お前一人ならいい。」
佐助くんの事気付いた・・・?
佐助くんに出した湯呑みは[時間切れ]という言葉を合図にいつものように片付けた。
佐助の痕跡はないものの、まさかという思いでバクバクと心臓が煩く鳴る。
落ち着かなきゃ・・・
「誰かを探していたんですか?」
「・・・いや、気にするな。」
気になるよ・・・光秀さんの怪しく光る瞳が何を物語っているのか見えず不安が襲う。
「そうだ夕霧。使いを頼まれてくれないか。」
「あ・・・はい。大丈夫です」
光秀は風呂敷に包まれた巻物を夕霧の膝元に置いた。
「これを秀吉に届けてくれ。」
「分かりました。」
秀吉さんの御殿か・・・先程まで話していた三献の茶の話が頭に浮かぶ。
「光秀さん、ちょっと聞いてもいいですか?」
「何だ。」
「光秀さんからみて三成くんはどんな人ですか?」
一瞬目を丸くした光秀だったが、いつもの怪しげな笑みで夕霧を見つめる。
「何だ恋でもしたか。」
「な、何でそうなるんですかっ!」
「違うのか。」
「違いますっ!!」
膨れる夕霧に意地悪な笑みを浮かべながら
「冗談だ。」
くすりと笑った。