第17章 三成の秘密。・:+°三成。・:+°
昼餉を終え、自室に戻ると裁縫箱を開ける。
以前政宗にほつれを直してくれと頼まれ、先程政宗の女中が何着か風呂敷に包んで持ってきた。
さて、どれから縫おうかな・・・
風呂敷を開き一番上の着物を手に取った時、天井からカタッと音がした。
「佐助くん?」
音もなく夕霧の前に降りる佐助。会う度忍者の腕に磨きがかかっているように思う。
「久しぶり。」
「今回は長く安土にいられるの?」
「3日位かな。戦好きの主君が刀を振るいたいって騒いでるから早めに帰る。」
佐助くんの話を聞いてくすっと笑みがこぼれた。そんな姿が想像できる。
「鶴姫一文字が泣いている」
きっとそう言いながら家臣達を困らせているんだろう。
「大変だね。佐助くんも。」
「いつもの事だから気にならなくなってる。」
慣れって恐ろしいな・・・そう思いながら佐助くんにお茶を出した。
「あ・・・」
「ん?どうかした?」
「ごめんね、茶葉が茶托に・・・」
「大丈夫、気にしないで。」
夕霧がそっと茶托に落ちた茶葉を拾うとクスクスと笑い出す。
「夕霧さん・・・大丈夫?」
「ごめん・・・思い出し笑い。」
恥ずかしい・・・どう考えても変な人だよね。突然笑い出すなんて・・・
「何を思い出してたの?」
「この間、秀吉さんの御殿で三成くんがお茶を入れるって言ったんだけど、どんどん茶葉を入れちゃって秀吉さんが茶葉の煮浸しになるって・・・」
「え・・・?」
佐助の顔が一瞬曇る。
あれ?何か言っちゃいけない事言ったかな?
「何かいけない事言っちゃった?」
「いや、そうじゃなくて・・・」
無表情ではあるものの、佐助は考え込んでいるようだった。
ほんの少し間を置いた後、佐助の口が開いた。
「夕霧さんは三献の茶って話知ってる?」
さんこん?
「知らない・・・ごめんね、歴史には疎くて・・・」
自分でもそう言いながら何だか申し訳ない気持ちになった。
その歴史で習った時代に実際身を置いている上、名だたる武将と日々過ごしている。
もうちょっとちゃんと勉強しておくんだったな・・・