第16章 内緒。・:+°政宗。・:+°
言ったらサプライズにはならない。でも政宗に変な誤解をされたくない・・・
そんな葛藤からつい言い訳がましい言葉がついて出た。
「そうじゃねえ。」
「じゃあ何に怒って・・・」
「お前、今日針子部屋行ったか?」
「え?行ってないよ・・・」
何で針子部屋?
聞かれた質問の意図が全く見えないまま答えるとその返答に政宗はため息をつき、頭を抱えている。
「なんで今日に限って行かねえんだ。」
「今日は朝から秀吉さんに頼まれた仕事をしてたから行けなかったの。」
「ちょっと待ってろ。」
政宗は台所を出て行ってしまう。
暫くすると何かを手に持って戻ってきた。
文・・・?
何も言わず渡されたそれを開いて読む。
夕霧
明日は早朝から国境の小競り合いを収めに行く。
今日中にカタをつけて戻る。
大人しく待ってろよ。
作った栗きんとんは誰にも渡すな。
お前の作ったものは俺だけに食べさせろ。
伊達 政宗
「昨日の忘れ物って・・・」
「直接これを伝えに来た。だがお前が菓子作りに一生懸命だったからな。文にしたためて針子部屋のお前の裁縫箱に入れておいた。・・・まさか裁縫箱を開けないとは思わなかったが。」
「ごめんね政宗。」
「仕方ないだろ。だが・・・家臣に渡すのは反則だ。」
政宗はむすっとした顔で夕霧を見る。
「ごめん。政宗をびっくりさせたくて隠れてお菓子を作ってたんだけど・・・バレちゃったからいつもお世話になってる家臣の皆さんで・・・って渡したの。」
「これからは駄目だ。」
政宗は夕霧の頭をこつんと叩く。
「痛いよっ政宗。」
夕霧は少し涙目になりながら政宗を睨みつけた。
「お前の作ったものは全部俺のだ。誰にも食べさせるな。」