第16章 内緒。・:+°政宗。・:+°
じゅわじゅわと音を立てて泡がフツフツと浮かんでは消えていく様を見つめ愛する人を想う。
政宗喜んでくれるかな・・・
芋けんぴなんてこの時代にはまだ無い。喜んでくれると良いんだけど・・・
カラリと揚がったそれを一つ口に放り込む。
あまい・・・
優しい甘さが口に広がり自然に口元が緩む。
素揚げだけでも十分美味しいけど、せっかくだから芋けんぴにしよう。
えっと・・・砂糖と・・・えーっと・・・
小鉢に調味料を入れようとしたその時、視界が真っ暗になる。
「わぁっ!!」
コトンッカラカラカラッ
ビックリした拍子に小鉢と匙を落としてしまう。
何が起きたのか分からない。ただ、視界を遮っているものは暖かくて大きな・・・手?・・・もしかして・・・
ぱっと暖かい手が離されこめかみ辺りに移動し、そのままグイッと顔を上向きにされた。
上を向かされた瞳に飛び込んできたのは逆さに映る政宗の顔。
「政宗っ・・・」
「何してんだ。」
「政宗こそっ!小競り合いを収めに行ったんじゃ・・・」
「さっさと終わらせて戻ってきた。」
こんなに早く戻ってくるなんて想定外だった・・・
「何だ?俺が帰ってきて嬉しくないって顔してるぞ。」
「そんな事なっ・・・」
言い終わらないうちに唇をそのまま奪われる。
顔の向きがお互い逆の為、体勢も反らした喉も苦しくなったがそれをすぐ察知したかのように政宗は肩に手を置きぐるりと夕霧の向きを変え更に深く口付ける。
何かいつもより荒々しい・・・
「・・・んっ・・・っは」
突然の長い口付けに息もできず離された唇は慌てて息を吸い込んだ。
「政・・・っ」
口を開く暇もなく唇を食まれる。深く侵入してくる舌もいつもの余裕が感じられない。
怒ってる・・・?
何とか離そうと固い胸板を叩くがビクともしない。
「んっ・・・」
やっと離された唇に少し安堵して政宗を見つめる。
政宗の瞳は暖かみがあるものの・・・。怒りを秘めている様にみえた。
「政宗・・・怒ってる?」
「あぁ。」
やっぱり・・・
「別にやましい事がある訳じゃ・・・」