第16章 内緒。・:+°政宗。・:+°
ぎゅうっと抱きしめられ、心臓がうるさく音を立てる。嬉しい・・・政宗はこういう嬉しい事をさらっと言ってくれる。
あれ・・・?
「政宗、何で渡した事知ってるの?」
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夕霧に書いた文の約束を守る為早馬で戻ってきただけあり、西の空は黒い闇と夕焼けが混ざりあっている。
「おかえりなさいませ。」
御殿の虎口で家臣が出迎える。
「戻った」
「お早いお戻り、無事で何よりです。政宗様・・・これから夕霧様の元へ?」
「ああ。」
「実は夕霧様に私達にと菓子を頂きまして。」
「まさか栗きんとんか?」
「・・・ええ、はい。政宗様へかとお聞きしたのですが、これは皆さんで食べてくださいと。・・・」
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なるほど。それで分かったのか・・・
「ごめんね。政宗の手紙に気づかなくて」
「俺もこれからはちゃんとお前に直接言うようにする。」
ふふっと二人で笑いあった。
「で?俺に内緒で何作ってたんだ?」
政宗はきつね色に揚がったサツマイモを一つ摘んで口に放り込む。
「ん、甘いな・・・」
「甘藷って言うんだって。私の時代ではサツマイモって呼ばれてるの。」
「珍しい芋だ。」
もう一つ摘んで口に放り込もうとした政宗を慌てて止める。
「待って政宗。もうひと手間かけたいんだけど。」
「ほぅ。それは楽しみだ。」
楽しげに笑いながら板の間に腰を下ろし胡座を書き夕霧を見つめる。
その姿を確かめてから夕霧は鍋にサツマイモを入れて混ぜ始めた。
「政宗、胡麻ってどこにあるの?」
「ちょっと待ってろ。」
政宗が棚から胡麻の入った壺を取り出し夕霧の所に戻ると更にツヤツヤと照りがついたさっきのサツマイモ。
「ありがとう。最後に胡麻を振りかけて出来上がり。」
政宗がパラパラと胡麻を散らす。
「美味しそうだね」
ふにゃふにゃと笑う夕霧を見て政宗の口元も緩んだ。