第15章 文。・:+°秀吉。・:+°
「忘れられません・・・」
忘れられる訳ない。私自身もずっと思っていた事・・・。
この兄と妹の関係を越えたいと心の内で密かに思っていたのだから。
夕霧は何かを決めた様に口を開く。
「返事、部屋に戻ったら書きますね。待っててくれますか?」
文にしたためて思いの内を全部さらけ出そう。
大好きだって事たくさん書こう。秀吉さんが書いてくれたように。
「あぁ、待つよ。お前の気持ちを文にしたためてくれ。」
ふふっと顔を見合わせ微笑み合う。
「じゃあこの文は頂いていきますね。」
夕霧は先程秀吉に取り上げられた文を拾い上げる。
「だめだ。これは燃やす。」
秀吉がスッと夕霧の手から文を抜き取る。
「あっ!!秀吉さん!返してください」
「だめだ。これはお前に渡す文じゃない。」
「私宛てになってたんですから私のです。それを読みながら返事が書きたいのに・・・」
「やめてくれ・・・これ以上俺に恥をかかせるな。」
秀吉の頬は赤くなっている。
「じゃあ夕霧。代わりに・・・俺ももう一度文を出すよ。お前宛てに。」
「じゃあ明日交換しましょう。」
夕霧は小指を立てて秀吉の前に出した。
「は?」
「え?指切りしましょ?」
「何だそれ。」
この時代にはないのか・・・。そう思いつつ秀吉にも小指を出させて自分の小指を絡ませる。
「ゆーびきーりげーんまーん嘘ついたら針千本のーます!ゆびきった!」
絡めた小指を勢いよく離した途端秀吉が笑いだした。
「まじないか?」
「私の時代ではこうやって約束してたんですよ。子供の頃。」
「子どもの頃の風習にしては物騒な事言ってたぞ。」
ふふっと笑いがこみ上げてクスクス笑う。
確かにそうだな。約束破ったら針千本飲ませちゃうんだから。
「物騒だと思うならちゃんと約束守ってくださいね。」
「ああ。わかってる。」
二人は顔を見あわせて笑い合う。
「よし、城まで送る。行くぞ。」
明日果たされる約束を互いに楽しみにしながら二人は城へと向かうのであった。
終