第15章 文。・:+°秀吉。・:+°
あれ?
えっと・・・
夕霧愛している。
え?これって・・・
段々と顔がかぁーっと熱を持ち始める。
これって秀吉さんの字だよね!?そしてこの内容は・・・
手にしている文で顔を隠す。・・・隠さないと前に座っている人に顔が見られてしまう。
見せられないよ・・・こんな顔っ!
夕霧の前に座るその文の持ち主も何だかおかしな夕霧の様子に気づいて慌てて引き出しを探る。
探って出てきたのは夕霧に渡した筈の大名からの礼状・・・
「・・・っ!!夕霧っ!それは・・・とにかく一旦戻してくれ!」
慌てる秀吉だが、時既に遅く・・・
夕霧は文で顔を隠したまま動かない。
「もぅ・・・読んじゃいました・・・」
顔を隠したまま、か細い声でそう告げる。
「そうか・・・」
ぽつりと聞こえた声が気になって文をそろそろと目の下まで下げて秀吉の様子を伺う。
そこには胡座をかいた膝に肘を付き、片手で顔を覆う彼の姿・・・
覆った手から微かに見える頬はほのかに染まっているように見える。
「よし!!!」
何かを覚悟した様な大きな声が響いた瞬間、顔を隠していた文を取り上げられ、ふわりと抱きしめられる。
突然の事に驚き口をただパクパクと動かし声を出せずにいると頭の上から優しい声が落とされた。
「これは見せるつもりのない文だったんだ・・・」
夕霧に自分の気持ちを見せない為に。
決して口には出来ない溢れ出る思いを文にしたためて気持ちを収めていた。
この関係を崩さないように・・・妹として見続ける為に。
この文の中だけは自分の本音をさらけ出して発散させていた。
「それは俺の本当の心の内だ。・・・でも忘れてくれ。」
大切な夕霧をこんな事で失いたくない。
自分の気持ちを知られた以上、それが夕霧に重荷となってのしかかって欲しくない。
違うな・・・ただ自分自身が。
兄と妹というぬるま湯の様な関係から抜け出すのが怖くて抜け出したくないのかもしれない。