第15章 文。・:+°秀吉。・:+°
「文が読めない!?」
「・・・はい。本当にごめんなさい・・・」
謝りつつそろりと前にいる人の顔を見上げると、そこには面食らったと言った言葉がしっくり来る秀吉の姿。
(そうだよね。そりゃそうなるよね・・・)
その顔を長くは見ていられなかった。これから私に向ける秀吉さんの表情が怖くて目を瞑って下を向く。
「夕霧・・・」
声と共に頭をぽんぽんと撫でられ、反射的に上を向いた。
秀吉さんの表情はすごく優しい。
「お前、ずっと悩んでたんだな。よく言った偉いぞ。」
頭に乗ったままの手でよしよしと撫でながら秀吉は夕霧に微笑んだ。
「でもこれからはもっと早く言えよ。辛いお前の顔は見たくない。」
本当に秀吉さん・・・優しいな・・・
「ありがとう」
「でも、それを告げるだけに来たんじゃないだろ?」
「うん・・・出来れば教えてほしいです。」
「よし、じゃあせっかく色々な書簡もある。これで読む練習でもするか。」
秀吉さんはそれは丁寧に丁寧に教えてくれた。
分からなければ何度でも教え、間違えばどう違うのか分かりやすく夕霧に伝えた。
「分かってきた気がします。」
「飲み込みが早いからこっちも心配なく教えられる。頑張ったな。夕霧」
秀吉は優しい眼差しで夕霧を見つめ頭を撫でる。
「ありがとう。秀吉さん」
秀吉さんに褒められる事が素直に嬉しい。
秀吉の優しい顔を見て夕霧は満面の笑みを浮かべる。
「よし、じゃあ今日はこれ位にするか。そうそう、崩した割に読みやすい書簡が一つある。今日の仕上げに読んでみるか?」
「うん!」
文机の引き出しから出された書簡。
秀吉さん曰く地方の大名の書簡だそうで秀吉さんに宛てた礼状らしい。
「これが読めたら次回はもう少し難しくしような。」
秀吉に差し出され、くるくると畳まれた文を開いていく。
ん・・・?