第14章 兄と弟。・:+°信長、家康。・:+°
仕方ないと言わんばかりに信長は腰を下ろし、背を竹千代に向ける。
「のぶなが・・・さま?」
「早く乗れ。」
竹千代をおぶった信長はひょいっひょいっと山を登っていく。
そのうちに竹千代は泣き止んでいた。
「のぶながさま・・・ぼくあるきます。」
竹千代が降りようと後ろに向かって力を入れるがビクともしない。
「ならん。貴様が降りてまた泣かれると適わんからな。」
途中見つけた柿を竹千代に二つもぎ取らせると、また軽やかな足取りでどんどんと山奥へ進んで行く。
薄暗い木々の中を抜けると陽の光で目が眩んだ。
眩しさにも慣れ、ゆっくりと目を開けるとそこには古渡城下が広がっていた。
「うわぁ・・・」
竹千代を降ろし二つの柿を受け取るとごしごしと袖で拭いて一つを竹千代の前に差し出す。
「これ・・・どうやってたべたら・・・」
「何だ知らんのか。」
がぶりとかぶりついて見せるとそれを見て竹千代も齧ってみる。
「あまーい!」
「うまいだろう。」
「のぶながさまはぼくがしらないことばかりしっていますね。すごいです。」
「俺はうつけだからな。真似はしない事だ。」
くくっと信長は笑って見せた。
「でもぼく・・・のぶながさまだいすきです!」
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「信長様・・・?」
くくっと笑いだした信長を不思議そうに見る夕霧に信長は思い出し笑いだと告げる。
「天邪鬼とは言うものの今より遥かに素直だったが。」
信長は話を続けた。
「あやつが織田に人質としている間、実の兄弟以上によく遊んだ。剣術を教えれば誰よりも鍛錬を怠らず、いつも俺に付いて回った。」
「今川と織田の人質交換で今川の手に渡ったが、桶狭間で家康を自由に出来た時安堵した。俺の中では今でも大事な弟だ。」
「それ、本人に言ってあげてはどうですか?」
「あの天邪鬼に言ったところで本気にはするまい。あやつから本音が聞けた。充分な収穫だ。」