第14章 兄と弟。・:+°信長、家康。・:+°
あ・・・分かった。秀吉さんが私に向ける表情だ。
信長様は家康の事、大切に思ってるんだな。この表情でよく分かる。
「よく家康に悪戯もした。渋柿を食べさせて泣かせたり・・・膨らませた蛙を踏めと命じたら、可哀想だと大泣きした事もあったな。」
「もうそれ、聞き飽きました。散々酒の肴にされてますから。」
「でも・・・」
家康がぼそっと話し始める。
「いつも信長様に振り回された後に聞く理想の日ノ本の話だけは何度聞いても飽きなかったですけどね。」
「もう、いいでしょ?失礼します。」
さっさと立ち上がり、パシンッという襖の音ともに家康は天主を後にした。
ぷいっとそっぽを向いた顔は少し赤みがさしているように見えた。
家康が天主を去ってから信長が口を開く。
「どうだ?満足したか。」
「はい。家康には悪い事しちゃったかもしれません。」
やっぱり過去の話はダメだったかな・・・。
質問した時、しまったとも思ったが、つい興味本位で聞いてしまった。
「あやつなら大丈夫だ。」
信長は遠くを見つめて幼い家康を思い出す。
「織田家の人質として売られて来た家康はなかなか心を開かなかった。」
「だから無理矢理連れ回していたんですね。」
信長様らしいなと夕霧は思う。
「最初はよく泣かれたが、だんだんと心を開くようになった。」
天邪鬼は直らんがな。と信長は笑う。
昔からだったんだ・・・。家康の天邪鬼。
夕霧もつられて笑みがこぼれる。
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勢いよく襖を開けたその先には小さく丸まった童。
「うっ・・・うぇっ・・・ぅくっ・・・」
「竹千代・・・毎日泣いて飽きんのか。」
ため息を付きつつ信長が童に聞く。
「・・・泣いて・・・うぇっ・・・ません。」
くくっと笑うと信長は竹千代の襟首を掴み無理矢理立たせた。
「うぇっ・・・ひくっ・・・」
「来い。」
「いや・・・ひくっ・・・です」