第13章 雨。・:+°信長。・:+°
昼間から天主で信長様とゆっくり過ごす事なんてまず出来ない。
大きな戦はないものの、信長様が忙しいのは毎日の事で。
そんな忙しい合間に降った雨のお陰で国境への視察が延期になり、久々に昼間に天主で二人でお茶を飲む時間が出来た。
誘ってくれたのは信長だった。
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瓦に当たる雨の音がだんだんと大きくなっている。
「今日は一日止まなそうだな・・・」
お針子部屋でいつもの様に着物を仕立てている手を止めて音の方へ顔を向ける。
「姫様が毎日こちらに足を運んで下さるので私達としては嬉しいですが・・・」
女中の言葉でふと気づく。
確かに毎日この部屋で女中達と着物の仕立てや
繕いものをしている。
国境の小競り合いが多く、最近は軍議に呼ばれる事も少ない。
ここにいる時間以外は誰かしら武将達と会っているので気づかなかった。
「そのせいで御館様との時間を割いているのではと心配で・・・」
「気にしないでください。信長様が忙しいだけですから・・・夜は会えますしね。」
今まで軍議やら視察やら戦やらとどんな時でもついていっていたのだ。女中が心配するのも無理はない。
「入るぞ。」
低い声と共にお針子部屋の襖が開いたかと思えば目の前に忙しいはずの信長の姿。
「信長様!?」
「悪いが夕霧を借りていく。」
その言葉にどうぞどうぞ、と女中達が仕立て途中の着物を夕霧から取り上げ背中を押す。
「え・・・あっ」
「こちらの事は気にせずに。」
「ありがとうございます。」
「すまんな」
襖が閉まると同時に女中達は顔を見合わせ微笑む。
「よかったですね夕霧様。」
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