第11章 百物語。・:+°三成ルート。・:+°
「だいぶ乾いてきたよ。」
髪を乾かす夕霧の腕が三成の肩に触れる。
「・・・三成くん・・・肩冷たくないの?」
先程まで雫が垂れる程だったのだから、肩が濡れていない訳がない。
百物語をしていた蝋燭の火を行灯に移す・・・
先程より明るくなった室内。
肩・・・と言うよりみぞ落ちの辺りまで羽織の色が変わってしまっている。
まるで雨に打たれ、ずぶ濡れになった様な出で立ちだった。
政宗がこいつは寝食に頓着しないと言っていたのを思い出したがまさかここまで酷いとは。
このままじゃマズイ。風邪ひいちゃう。
「三成くん、着替えた方がいいと思う。」
「そうですよね。・・・でも困りました。着替えがありません。」
三成の住まいは秀吉の御殿。このまま帰れば確実に風邪をひく。
だからと言って多分既に牛の刻をとうに過ぎているはず。
これから誰かを起こして着替えを用意してもらうのも気が引ける・・・。
「三成くん・・・私の着物でもいい?」
「そんな訳には参りません。夕霧様の大事な召し物をお借りするなど・・・。私の事はお気になさらず。」
そんなの無理だよ。とにかくすぐに着替えてもらわないと。
「とにかく脱いで。」
「分かりました。」
三成はスルスルと濡れた着物の袖を抜く。
肌脱ぎになり、三成の上半身が露になった。
この時代のぼんやりとした明かりでも美しい陶器のような白い肌だという事が分かる。
参謀役とはいえ、やはり武将だけあってその体は鍛え抜かれており、体の線は細いが美しい筋肉のラインが見える。
綺麗・・・
「夕霧様?」
「・・・え、あっ・・・ごめん!ぼーっとしちゃって・・・羽織持ってくるね・・・っ」
慌てて立ち上がろうとするが、焦った為に身体が前のめりになる。
「きゃっっ!」
どうしよう・・・このままじゃ手がつけないっ・・・
一瞬の事ながら冷静に自分の状況を把握する。
自分の置かれている状況に目を瞑ってしまう・・・