第1章 夏祭り。・:+°信長。・:+°
信長様が城に戻ってきてるかもしれない・・・
嬉しくて胸がトクンと鳴る。
「花火が始まる前に帰るぞ。」
秀吉に手を引かれたまま城まで走る・・・
ハァ・・・ハァ・・・
長い石段を上り、城にたどり着いた時には息切れがする。
こういう時に日頃の運動不足が祟るな・・・
息一つ上がってない秀吉をチラリと見て思う。
「石段を駆け上がって楽しそうだな。夕霧」
クククッと笑う方を見ればそこには信長と出掛けたはずの光秀。
「光秀さん!戻られたんですか?」
「ああ・・・近場だったからな、すぐ戻れた。ところで夕霧」
光秀は意地悪そうに微笑みながら夕霧を見る。
「こんな所にいていいのか?」
夕霧はハッと気づき
「私、信長様の所まで行ってきます!秀吉さんありがとう!楽しかった!」
満面の笑みを浮かべながら城内へ消えていった。
「あー、また転ぶぞ・・・」
「くくっ、最後の最後まで優しい兄様だな。」
「うるせぇ。」
「いいのか?祭りの最後まで共にいればいいものを・・・」
「あんな顔されたら一緒にいられねーよ。夕霧も信長様も幸せならそれでいい。」
「人たらしのお前でも夕霧は落とせないか。」
「人たらし言うな。あいつは俺の妹分・・・それで十分だ。」
信長様の部屋の前で夕霧は息を整える。
ドキドキする気持ちを押さえながら声をかけた。
「夕霧です・・・」
「入れ」
「失礼します。」
襖を開け部屋に入った途端、手首を掴まれ胸の中に抱きすくめられてしまう。
「あっ・・・」
「先刻戻った」
信長は夕霧の唇を優しく塞ぐ。
その甘い口付けに酔いしれながら、笑顔で言いたかった言葉を紡ぐ。
「おかえりなさい」
やっぱり信長様といっしょにいるとホッとする・・・
安心しきった顔で信長を見つめると、なにかに気づいた信長が眉を顰める。
「・・・?甘い匂いがするな」
「信長様にお土産です。」