第10章 百物語。・:+°信長ルート。・:+°
信長
「氷水でしばらく冷やしていたからな。」
襖一枚隔てた隣の部屋で桶に手を入れ、様子を伺っていたかと思うと可笑しさが込み上げて来る。
夕霧
「手が込み過ぎです。」
信長
「やるなら徹底的にやらんと面白味に欠けるだろう。」
ふと、政宗が以前信長様が人間くさくなってきたという話をしていたことを思い出す。
きっと以前の信長様ならこんな事はしなかっただろう。
首を触れられたのは本当に怖かったけど・・・
信長
「貴様・・・いつも触れている俺の手が分からんとは・・・」
ふぅとため息をついて横目で夕霧を見る。
夕霧
「あんな状況なら誰だって分かりませんっ!!」
信長
「そうか・・・?俺は貴様の手がどうであろうと絶対に気付くが。」
意地悪っぽく笑う信長をみていると本当にこの人なら自分だと気づく気がしてくる。
信長
「毎日の様に貴様の全てに触れ、愛でているのに気付かない訳なかろう。」
そう言うと夕霧の手を持ち上げ甲にちゅっと音を立て唇を落とす。
その言葉と行為に夕霧の頬がみるみる染まっていく。
慌て口付けられた手を引っ込め顔を隠す。
嬉しくて・・・でもこんな顔を愛する人に見られるのは恥ずかしくて。
信長
「この手は貴様の顔を隠す為のものではない。」
信長は顔を覆っている手を掴み顔から剥がし、そのまま自分の頬に持っていった。
じんわりと手に信長の温もりが伝わってくる。
信長
「この手は俺に触れる為のものだ。」
言い終わるが早いか指先を口の中に含み優しく舐め上げる。
夕霧
「ふっ・・・あっ・・・」
信長
「すべて・・・俺の物だ。」
二人で横たわった褥の上でふと思い出したように信長が笑う。
その姿に見惚れつつ
「どうしたんですか?」
と声をかける。
信長
「思い出し笑いだ。貴様の事になると必死な奴らばかりだからな・・・」
思い返すは百物語中に信長の手が夕霧の首に触れた時の事・・・