第10章 百物語。・:+°信長ルート。・:+°
何が起こったのか分からなかった・・・
誰かの口元が蝋燭へ近づいたかと思ったら、辺りは暗闇に包まれた・・・
すかさず夕霧の首元にヒンヤリとした何かが両側から這うように動く・・・
それが手だと気づくのに時間は掛からなかった。
そのまま首を這いその手が首を掴む・・・
夕霧
「きゃああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
「夕霧!!!!!」
みんなの呼ぶ声が聞こえたと同時に夕霧は意識を手放した・・・
夕霧
「んっ・・・」
目を開けると毎朝見る風景・・・
安土城の天主の天井が見えた。
信長
「起きたか・・・」
信長の顔が逆さに映る。
夕霧は信長の胡座を枕にして寝かされていた。
夕霧
「あれ?私・・・何で・・・」
起き上がり周りを見渡す。
信長
「百物語をしていて気を失ったのは覚えているか?」
夕霧
「あ・・・」
段々と思い出す・・・冷たい手が・・・
夕霧
「信長様・・・」
じわっと涙が目に溜まり、慌てて信長に飛びついた。
信長は夕霧を受け止め抱きしめる。
信長
「大丈夫だ。物の怪ではない。」
夕霧
「じゃあ・・・一体何が・・・」
信長
「俺だ。」
夕霧
「え?」
想像もしていない言葉に驚く。
信長
「元々この百物語を計画したのは俺と光秀だ。」
信長と光秀二人で酒を酌み交わしていた時に計画された百物語。
光秀が百物語を夕霧に持ちかけ、信長が冷やした手で後ろから驚かす予定だった事。
しかし思いもよらぬ参戦者が四人も増えた事により盛り上がってしまった為、機を伺っていた事。
つらつらと夕霧に話して聞かせた。
夕霧
「酷いです・・・」
信長
「少し度が過ぎたな。」
信長は苦笑を浮かべながら夕霧の額に唇を落とし髪を梳いた。
夕霧はスッと信長の手を取る。
信長
「どうした・・・?」
夕霧
「物凄く冷たくて・・・人の手だとは思えませんでした。ましてや信長様の手なんて。」