第6章 俺だけのもの。・:+°秀吉。・:+°
これが愚痴だとしてもほかの男の名前が出てくるのがここまで嫌だとは・・・
正直自分の心の内がこんなにも夕霧でいっぱいだとは思っていなかった。
この話が光秀ではなく、尊敬し命をも捧げると決めた主君であっても、この可愛い唇から発する名は俺だけであって欲しいと思うのだろうか・・・
「・・・さん?」
「・・・し・・・さん?」
夕霧
「秀吉さん?」
秀吉
「・・・ん?あ、悪い…何だった?」
夕霧
「もぅ!聞いてなかったんですか?」
秀吉
「聞いてなかった。」
夕霧
「え・・・?」
キョトンとした顔で秀吉を見つめる。
いつもの秀吉なら絶対有り得ないからだ。
自分の事より他人の事。
そんな秀吉が夕霧が泣きながら話す言葉を聞いていないなんて想像もしていなかった。
夕霧
「秀・・・吉・・・さん?」
秀吉
「聞いてなかったというより、聞きたくなかった。」
夕霧
「・・・ごめんなさいっ!」
夕霧は慌てて頭を下げる。
夕霧
「光秀さんの愚痴なんて聞きたくなかったですよね。
秀吉さん、いつも私の話聞いてくれるからつい・・・でも、何で光秀さんは最近あんなに私の事・・・んっ・・・」
気付けば手を引き夕霧の体を引き寄せ、唇を奪っていた。
夕霧
「・・・秀吉さん?」
秀吉
「悪い・・・そうじゃないんだ。」
夕霧は理解出来ないと言わんばかりの顔をしている。
秀吉
「お前の口から光秀の名を出して欲しくなかっただけだ。・・・お前には俺の名だけ呼んで欲しい。」
夕霧の顔がみるみる赤く染まっていく。
秀吉
「好きだ・・・」
そう言うと、額に口付けを落とした。
夕霧
「・・・も・・・です。」
秀吉
「ん・・・?どうした?」
俯いたままの夕霧の声が聞き取れず、もう一度聞き直す。
夕霧
「私もです・・・」
その言葉を聞くが早いか、秀吉は夕霧を抱きしめた。
自分と同じ気持ちだったと分かった途端、今まで以上にこの手から離したくないなんて思ってしまう。