第6章 俺だけのもの。・:+°秀吉。・:+°
中庭に面した廊下を歩いていると見慣れた姿を見つける。
その姿は池に向かって寂しそうに立っていた。
秀吉
「夕霧・・・?」
声をかけるとくるりと振り向く。
夕霧
「秀吉さぁん・・・」
夕霧は秀吉の顔を見た瞬間にポロポロと涙がこぼれ、そのまま胸にトンと顔を埋めた。
秀吉
「とりあえず落ち着け。俺の部屋で茶でも出してやるから・・・な。」
頭にポンポンと触れ、秀吉は夕霧の顔を覗き込んだ。
コクンと頷き秀吉の部屋へと付いていく。
秀吉
「熱いから気をつけろよ。」
出してもらったお茶に口を付ける。
それだけで少しホッとしたが、秀吉の優しさにまたすぐに涙がポロポロと溢れ出す。
そんな夕霧を見てすぐ側に座り秀吉は頭を撫でる。
秀吉
「どうした?何かあったのか?」
夕霧
「光秀さんが・・・」
秀吉
「光秀?」
夕霧
「私に意地悪を・・・」
秀吉
「あいつの意地悪なんていつもの事だろ?」
夕霧
「でも!何か最近酷いんです!」
急に顔を上げ顔を見上げる。
あーあ。こするから目が赤くなったな・・・苦笑いしながら静かに夕霧を見つめた。
夕霧
「顔を合わせればからかうし・・・かと思うと後ろから抱きすくめられたり頭をなでたり・・・もうあの人がよく分かりません。」
秀吉
「それは・・・」
言いかけて辞めた。多分光秀はこの子に特別な感情を抱いているんじゃないのか・・・
そんな言いかけた言葉も聞こえないほどに、夕霧はつらつらと光秀から受けた嫌がらせ(夕霧はこう思っているらしい。)を事細かに説明している。
まぁ、あいつは色恋どうこうって感じじゃないけどな。
ただ、夕霧が安土に来てから城の雰囲気もガラリと変わった。
夕霧のお陰で織田軍の面々もいい意味で変わって来ている。
光秀がそういう感情を持つのも夕霧に対してならありえるかもしれない・・・
それよりも・・・