第4章 かき氷。・:+°家康。・:+°
家康
「暑い・・・」
家康は文机に山積みになった書簡を前にため息をついた。
暦でいけば残暑のはずだけど・・・
真夏はとうに過ぎたのに・・・
真夏と変わらない暑さ・・・残暑なんて言葉だけだ・・・
夕霧
「家康ー。」
名前を呼ぶ方を見上げると夕霧が、襖からひょこっと顔を出している。
家康
「何の用?」
夕霧
「もー、素っ気ないなぁ。」
夕霧がぷぅっと膨れてみせる。
何それ、めっちゃ可愛いんだけど。
夕霧
「今から城まで行かない?」
家康
「この一番暑い時に外に出るの?馬鹿なの?」
夕霧
「暑いから行くんだよ」
そう言うとおいでおいでと手招きする。
家康
「行かない。」
夕霧
「そんな事言わないでよ」
今度は近づいて隣に座り、家康の袖を掴んでツンツンと引っ張る。
いちいち俺の心をくすぐる・・・
家康
「分かったよ。行けばいいんでしょ。」
夕霧はフンフンと鼻歌を歌いながら俺の横を歩いている。
何となく夕霧に触れたくなって指を絡める。
どんな顔してるんだろ・・・
気になって横にいる夕霧の顔をのぞき込んだ。
夕霧
「見ないでよ・・・」
赤くなってる。
そんな夕霧を見て口元を緩め、更に握る力を強くした。
城に着くと夕霧の向かう先は台所。
「おっ!来たな」
政宗さんいるし・・・
夕霧
「ごめんね政宗。遅くなっちゃった」
政宗は二人の目の前に、山のようにこんもり盛られた赤色と抹茶色のかき氷を二皿ドンドンっと置いた。
政宗
「溶ける前に食えよ」
夕霧
「ありがとう!いただきます。」
匙で掬って頬張る。
夕霧
「幸せー♡」
政宗
「家康!何ボーッとしてんだ。バレる前にさっさと食え。」
家康
「いただきます。」
匙で掬って口に入れる。
うまい・・・
さっきまで持っていた体の熱がスーッと冷めていくのを感じながら今の状況を整理した。