第3章 カケゴト。・:+°信長。・:+°(R18)
宴や夕餉など、お酒が出てくる場面などいくらでもある。
その度に酌をするし、「飲め」と言われれば無理のない程度に飲んでいるつもりだ。
勝てば褒美としてくれてやるとでも言うのだろうか。
でもそれでは賭けではなくなってしまう。
「賭けをする」と言った時点で信長様が益のない事を提案するとも何となく思えなかった。
そんな不思議そうな顔をする夕霧に信長が話し始めた。
信長
「以前、貴様は俺の酔ったところが見たいと言った事があったな。」
夕霧は今でも残るその記憶を呼び起こしていた。
普段は酔った姿を誰にも見せない信長。
見たいと言われ、夕霧に酔った姿を見せた事があった。
信長
「俺も、貴様の酔う姿が見たい。」
そんな事を言われると思っておらず口をポカンと開けた夕霧。
夕霧
「いつも見てらっしゃいますよね?」
信長
「ああ。」
夕霧
「じゃあ賭けにしなくても・・・」
信長
「貴様、俺が気づいてないとでも思っているのか。」
夕霧
「え?」
信長
「普段の酒の席で潰れる程呑まない様気をつけているのは貴様も一緒だろう。」
夕霧
「あ・・・・・・」
信長に言われ、ハッとする。
信長様の酔った姿を見たいと言っておきながら、自分もみんなのいる前では酔いが回り過ぎないように気をつけている。
酔ったとしてもほろ酔い程度だ。
気づいてたんだ・・・
・・・というより、自分も無意識だったのだが・・・
信長
「負けたら何も考えず酒に酔う夕霧を見たい。」
夕霧
「いつもと変わらないと思いますが・・・」
信長
「それでもいい。俺だけに酔う姿を見せろ。」
夕霧
「わかりました。でも・・・」
信長
「何だ・・・?」
夕霧
「信長様が負けたらどうしますか?」
信長
「そうだな・・・」
夕霧
「耳掃除なんてどうですか?」
信長
「いいだろう。それは絶対負けられんな。耳掃除はかなわん。」
フッと笑う信長につられて夕霧も笑う。
夕霧
「参りました。」
信長
「なかなか上達したな。勝負する度手応えを感じる。」
夕霧
「ありがとうございます。」