第2章 刺激的な口付け。・:+°家康。・:+°
「これどうしようね。」
手の中にある小さな籠を見つめて夕霧が呟く。
「あ、ここの女中さん達ならちゃんと調理してくれるよね。」
家康の膳を毎日作ってるあの人達なら何の問題もなさそうだな。
「台所に行って渡してくるね。」
立ち上がろうとした夕霧の袖を引いて家康はそれを制した。
「え?家康?」
「せっかくだから台所に持って行く前に一つ貰う。」
そう言うと夕霧の手に収まっている籠の中から一つ島とうがらしを取り出しポイッと口に投げ入れた。
「あっ家康!だめっ!!」
慌てる夕霧に家康は平然と口を動かしごくんと飲み込む。
それを心配そうな顔で見つめる夕霧に微笑んでみせた。
「辛くないから大丈夫。」
「本当に?」
「ああ、全然・・・試してみる?」
「えっ?」
試す意味が分からずただ驚いて口をポカンと開けている夕霧に覆い被さるように家康は口を塞ぐ。
「んっ・・・」
家康の胸を押し、離れようと必死になっている夕霧を腕に閉じ込め、深く舌をねじ込んだ。
「んっ・・・」
胸を叩いて踠く夕霧の目尻にみるみるうちに涙が溜まり、二人の頬と頬の間を伝う。
その生暖かいものに気づいた家康は反射的に唇を離した。
「んはっ・・・」
しまった・・・
離した途端に見えた夕霧の顔が苦しそうで家康に後悔が一気に押し寄せる。
「・・・辛いっ!!!」
・・・え?
吐いた息と同時に出た言葉に家康は目を丸くし、夕霧は家康を涙目のまま睨む。
「酷いよ家康・・・」
・・・よかった。
頬と頬の間を伝った涙に慌てて唇を離した時は辛さのせいなんて思わなかった。
本気で嫌がっているのかと思った。あんな風に拒まれた事がなかったから。
それが辛さのせいだった事に、つい安堵して笑みが零れた。
「家康の意地悪・・・」
家康の笑みの理由を知る由もない夕霧は、むくれたままそっぽを向く。