第21章 はんぶんこ。・:+°幸村。・:+°side姫
「幸と姫の話は後から聞かせてくれ。とりあえず温かいうちに朝餉にしよう。」
その言葉に先程までの何とも言えない雰囲気も解け、いつもと同じ朝餉の時間が始まった。
「さて、話を聞こうか。」
朝餉も終わり信玄様は三人の前へ胡座を書き笑みを浮かべる。
くだらん。
その一言だけ言い捨てて謙信様は広間を後にしてしまった。
「・・・」
信玄様を前にして黙り込む。
大事にしたくない・・・というか大事にする様な話でもない。
些細な事からの喧嘩。しかも幸村が話してくれない限り解決出来るわけがない。
考えは同じなのか幸村も何も口にする気は無さそうだった。
「ただの痴話喧嘩です。」
黙りこくったままの二人を見兼ねて佐助くんが口を開く。
「痴話喧嘩じゃねーよ。」
幸村がため息を付きながら反論した。
このやり取りもいつもなら笑えるのに・・・
とにかく、信玄様や佐助くんを巻き込む訳にはいかない。
「信玄様せっかくですけど私部屋に戻ります。・・・佐助くんもごめんね。」
この場の居づらさも手伝って、言い終えるが早いか立ち上がり自室へ早足で向かった。
パシンッ
襖を閉めてため息をつく。
もっと上手に信玄様をあしらえたらよかったな・・・
心配させる様な行動をした事に後悔しつつ座布団に腰を下ろすと、それと待っていたかの様に天井板が外れ音もなく目の前に人が現れた。
「佐助くんっ!」
「ごめん夕霧さん、こんな所から。普通に部屋に声を掛けてもきっと出て来てくれないと思って。」
「流石だね佐助くん。」
ふふっと笑うと佐助くんが安心した表情浮かべた。
「よかった笑ってくれて。さっきの君の顔を見てたら心配だったから。」
よっぽど酷い顔してたんだな・・・
「ごめんね、心配させちゃったね・・・」
「いや、もし夕霧さんが嫌じゃなかったら話聞かせてくれないか?」
「・・・わかった」
一瞬躊躇ったがこれ以上心配させたくない思いが勝って、ぽつりぽつりと話し始めた。