第20章 アドベントカレンダー。・:+°信玄。・:+°
「お、出来たのか。」
「はい。明日から一つづつ開けてくださいね。」
信玄はアドベントカレンダーをまじまじと見つめ無造作に一つ開けようと引き出しのツマミに手を伸ばす。
「「ダメです!」」
あれ?声が重なった・・・?
夕霧が辺りを見回すと同じ顔をした幸村がこっちを見ている。
「何だ幸まで。」
ははっと笑いながら信玄は手を止める。
「中には菓子が入るとの事。一日の甘味はそれでおやめ下さい。」
その言葉に怪訝そうな顔で幸村を見ながら信玄は口を開く。
「こんな少ない量、菓子のうちにも入らない」
「私からも約束です。その代わり信玄様の好きなお菓子を詰め込んでおきましたから。」
「幸と夕霧がそこまで言うなら分かった。」
肩を竦めてみせながら信玄が微笑んだ。
「それに・・・暫く会えませんから・・・」
明日になれば夕霧は安土に戻る。
「次に会う時にちゃんと約束が守れたか教えてください。」
ニッコリと微笑む夕霧に信玄も微笑み返す。
「それなら尚更約束を守らないとな。」
優しく夕霧の髪を梳く様に撫でる信玄を見て幸村が胸をなでおろしたのは言うまでもない。
翌日から信玄は夕霧の約束を守り、毎日一つづつ引き出しを開けていった。
金平糖、手毬飴、あられ、落雁・・・
毎日違うものが入っている。
少ないと言っていたはずの信玄の、日々の楽しみにとなっている。
菓子も然る事乍ら、丁寧に包まれた菓子の包み紙には文がしたためられていた。
小さい紙に書いてあるのは、体は大丈夫ですか?や今日も無理せず過ごしてください。などほんの一言だ。
それは確実に信玄の心を捉え、だんだんと菓子よりもその文を目当てに開けるようになっていた。
「幸村、最近信玄様にあまり小言を言わなくなったな。」
「あー言われてみればな。何か最近大人しいんだよ信玄様。菓子の約束も守ってるみたいだし・・・」
「それは凄いな。夕霧さんのお陰かな?」
「悔しいけどそーだろうな。ま、どうであれ信玄様が体を大切にしてくれりゃそれでいい。」