第19章 お手伝い。・:+°秀吉。・:+°
「秀吉さん仕事溜まってるでしょ。仕事の邪魔するのは嫌だから、私にも仕事が欲しいの。」
「わかった。」
こうなったら夕霧は言う事を聞かない。
「それに・・・秀吉さんの仕事が早く片付けば安心して一緒にゆっくり出来るでしょ。」
ニッコリと屈託のない笑顔で笑う夕霧をみて秀吉は咄嗟に抱きしめる。
「秀吉さん・・・?」
「お前は・・・本当に可愛すぎだ。」
おでこにそっと唇を押し当て秀吉は離れる。
「多分部屋に篭ってるとは思うが・・・」
そうこぼす秀吉の顔は家臣を心配する将と言うより子どもを心配する親の顔だ。
お母さんみたいだな・・・
こういう所もひっくるめて秀吉さんだ。三成
くんの事心配で仕方ないんだな・・・
「わかった。部屋を覗いてみるね。」
「頼んだ。そろそろ夕餉の時間だからちゃんと食べる様に言ってくれ。」
「き・・・緊張する。」
三成くんの部屋の前に立つと手に変な汗が滲んでいる事に気づく。
何故って・・・
部屋が暗いのだ。
廊下の行灯が柔らかい光を放っているだけで全く部屋からの灯りが見えない。
普通ここを通りがかれば部屋主は不在だと思うだろう。
夕霧も実は一度ここに来た。だが暗いので書庫にも行ってみた。
でも書庫はしんと静まり返り不気味な程だった。
もちろん奥まで誰かいないか確認したが三成の姿はなかった。
ということは・・・ここしかない。
でもこんな暗い部屋で字なんか読めるのかな・・・
ごくり・・・
自分の息を呑む音が聞こえた。
人の気配がないこの場では恐ろしい程に静かで自分の心臓の音がドクドクと響いている錯覚に陥る。
三成くん大丈夫だよね?
最悪の事態が頭をぐるぐる駆け巡る。
大丈夫・・・絶対・・・
でも・・・
ううん!こんな所で立ってても仕方ない・・・まず部屋を開けなきゃ・・・
夕霧はふーっと息を吐き、深く息を吸いこんだ。
「三成くん・・・?」
読んでみたが反応はない。
「・・・三成くん。」
先程よりも声を張ってみたが同じく返事はなく。