第19章 お手伝い。・:+°秀吉。・:+°
秀吉に見られないように襖に張りついて隠れたつもりだったが、どうやら上手く隠れられなかったらしい。
「見つかっちゃった・・・」
観念したかのように肩を竦め秀吉の前に向かい腰を下ろした。
「かくれんぼでもしてたのか?」
フッと目を細める秀吉の顔は優しい。先程の眉間に皺を寄せて書簡と睨めっこしていたのが嘘のようだ。
「来たなら来たで声をかけろって言ってるだろ。」
「でもそれじゃ秀吉さんの仕事の邪魔になっちゃう・・・」
「俺はお前がいてくれた方が仕事が捗る。」
秀吉は微笑み手招きをする。
それに誘われる様に夕霧は立ちあがりちょこんと横にもたれ掛かるように座った。
「謙虚だな。膝の中に来てもいいのに。」
「それじゃ仕事にならないよ・・・あ、一度休憩しない?政宗に作り方を習ったの。」
大事に持ってきた包みを秀吉の前で開くと甘辛く香ばしい匂いがふわっと香る。
「みたらし団子か。美味そうだ。」
「じゃあお茶入れてくるね!」
「美味しい・・・」
自分で言うのも変だが美味しい。政宗に習ってよかった。
「美味いな。ありがとな夕霧」
愛する人からのこの言葉だけで自分の頬が緩んでいくのが分かる。
「喜んでくれてよかった・・・秀吉さん?」
「ん・・・何だ?」
あれ・・・?何か表情がおかしい。
「どうかした?」
「いや、何でも・・・」
そう言いかけたが、秀吉は止めたと言わんばかりに首を振る。
「誤魔化すのは良くないよな。悪い夕霧。」
そう言うと優しく夕霧の頭を撫でた。
「実は・・・数日程三成に会ってなくてな。」
「え!?」
「俺も最近は信長様の視察にお供したり、政を手伝う事が多かったりで、御殿へ寝るだけに戻る様な生活をしていて三成を気にかけてやれてなくてな。」
秀吉は苦笑いを浮かべながら言葉を続ける。
「みたらし団子を食べていてあいつがちゃんと飯を食べているか無性に心配になって来たんだ。」
口に出した事によって更に秀吉の心配が増す。
「ちょっと見てくるか・・・」
「秀吉さん私が行くよ。」
「いや、俺の家臣の問題だ。」