第6章 轟焦凍✕アコースティッコフィリア【音響愛好】
「はぁ、はぁ‥」
行為が終わり、落ち着くために空気を吸い込む。
その度に胸が膨らみ、心臓の鼓動は次第に小さくなった。
「‥‥‥」
轟くんは何か考え事をしているような、しかし優しげな瞳で私を見つめながら
汗ばんでペトリと肌に吸い付く髪を整えてくれ、冷えないようにする為か自分の上着を掛けてくれた。
最初は訳もわからず只嫌だった筈なのに
今ではそこまでの嫌悪感が感じられない。
この気持ちは一体何なのだろうか。
「なぁ‥‥‥」
「え‥‥?」
先程まで無言で何か考え事をしていた轟くんが言葉を放つ。
何か私に言いたいことがあるのか‥。
取り敢えず静かに彼の話を聞こうと轟くんを見つめる。
「お前が普段歌ってる歌‥‥‥‥」
「………?」
「‥‥‥いや、何でもねぇ」
言いにくいのか、バツが悪そうに轟くんは目を逸した。
私の歌がどうかしたのか。
……そういえば、轟くんは私の歌が、音が好きだと言っていた。