第6章 轟焦凍✕アコースティッコフィリア【音響愛好】
「は、離して……」
逃れようとするも怖くて声が出ない。
普段の轟くんとは思えないような瞳が自身を捉えて上手く力が出せなかった。
「悪ぃな、木凩」
そうは言うも、決して離してはくれないようだ。
仕方がなく無理矢理にでも身体を起こして逃げようとした時だった。
……!?
唇に、柔らかい感覚が降ってきた。
「ん、んん……っ!」
驚いて目を見開くと彼と目が合う。
唐突にキスをされたのだ。
私にとっては初めての、ファーストキス。
口を離そうとするが、啄むように口を合わされて逃げることが出来ない。
「ん、ふぁ、…!」
チュ、チュル、…チュ
初めはゆっくりと触れるような口づけも、次第に激しくなっていく。
向きを変え、口内に入ってきた彼の舌は破裂を沿って、互いの唾液が混ざり合う。
激しい口づけは脳内に回る程の酸素は吸うことができず、コンマ数秒の間隔で少量の空気を吸うことで一杯いっぱいになる。
何をされているのかを頑張って理解しようとするなか、瞳には涙が溜まっていく事だけは知ることができた。