第6章 轟焦凍✕アコースティッコフィリア【音響愛好】
「え……?」
い、今彼は何て言ったのか
本来聞くことのないはずの台詞に戸惑う。
「な、なんで歌の事…」
そう、彼が知るはずのない事だ。
彼だけでは無い、誰も知らない筈。
そのためにずっと誰もが帰った時間に一人で歌っていたのだから。
「別に些細なきっかけだ。たまたま以前俺が用事を終えて学校から出ようとした時、たまたまお前の歌が聴こえた。凄ぇ綺麗な声だと思った。それからはずっとお前の歌を聞いてた」
戸惑っていた私の為か、轟くんは理由を話してくれた。
…話してくれたのは良いけれど……
とても恥ずかしい!!
「そ、うなんだ………」
恥ずかしくて下を俯くことしか出来ない。
まさか聞かれているとは思わなかった
自分でも分かるくらいに顔が熱くなっている。
「ずっと黙って聞いてたのは悪かった。だけど、俺は木凩の歌が好きだ。」
「……!」
真っ直ぐ轟くんに見つめられて、私は何も言えなくなった
ただ、
「あ、ありがとう…」
という言葉だけは、照れながらも答えた。